2020年秋季 発表要旨一覧

選挙戦のプロジェクトマネジメント

吉田 憲正


選挙は,民主的な組織構築や意思決定には欠かせない仕組みであり,また紛れも無くプロジェクトである.しかし,選挙そのものをプロジェクトマネジメントの視点から検討した先行事例は,見当たらない.今回選挙の代表な事例として,身近で民主主義の基盤である地方選挙を取り上げる.そして新人立候補者が投票日までの選挙戦というプロジェクトをどのようにマネジメントし当選できるかを,ステークホルダ・マネジメント,コミュニケーション・マネジメント,タイム・マネジメント,及びプログラムマネジメントの視点から考察する



ケースメソッドを活用したプロジェクトマネジャー育成のための研修手法

松田 章


プロジェクトマネジャーに必要なスキルは単にITスキルだけではなく,リーダーシップ,意思決定力などのヒューマンスキルも重要な位置を占めている.現在,プロジェクトマネジャーのヒューマンスキル向上のためにケースメソッドを活用した研修を開発し,運用を行っている.この研修ではケースによる疑似体験の中で受講生に考えさせるだけでなく,講師の経験,参加者の意見をもとにいろいろな意思決定のパターンを学ぶことで意思決定力の向上をめざしている.2017年から研修を開始して2019年までの3年間で36名が受講しており,研修での課題を改善することで研修手法も確立することができた.本稿ではケースメソッド活用した研修の手法とその効果について述べる.



顧客利益の可視化によるプロジェクト目標の設定に関する提案
- 「アジャイルプロジェクトの木」による顧客ベネフィットの構造化の研究 -

吉田 知加,関 哲朗,関口 明彦


近年のソフトウエア開発では, アジャイル開発が従来のウォータフォール型開発に代わって用いられるようになった.これは,ユーザの多様なビジネス要求に柔軟に対応することができるというアジャイル開発の特徴によるところが大きい.最近の議論ではポートフォリオマネジメントによって計画されるベネフィットの最大化への貢献をプロジェクトに期待することが一般となっている.このような考え方に呼応するように,アジャイル開発の目的を「ビジネス価値の最大化」とする研究はあるものの,このような目的に適うプロセスやその評価方法への言及を見ない.本論文では,機能カードについての考え方を「アジャイルプロジェクトの木」として整理することで,アジャイルプロジェクトを遂行する際に,イテレーション単位に考慮すべき目標の可視化を提案した.



デジタルトランスフォーメーションの推進に影響を与える組織文化のモデル化の試み

河村 智行,高野 研一


我が国の多くの企業が,デジタルトランスフォーメーション(DX)による成果を十分に得られていないと言われており,DXを効果的に推進できる能力の獲得が急務である.本研究は,DXの推進に影響を与える組織文化の要因とそれらの関連をモデルとして整理することで,企業のDXの推進に寄与することを目的とする.先行研究をもとにDXの推進に影響を与える組織文化の要因を洗い出し,E.Scheinの組織文化の3段階を参照してモデルを作成した.その結果,14の要因が相互に関連を持ちながらDXの推進に影響を与えることが確認された.



アジャイル開発導入の阻害要因と対処方法

冨田 裕


アジャイルソフトウェア開発宣言が発表されてから,まもなく20年が経過する.日本においてもアジャイル開発は普及してきたが,海外と比較すると普及度はまだ低い.本稿では,実際のプロジェクト現場におけるアジャイル導入事例などを元に,アジャイル開発の適用に対する,制度や文化的な阻害要素について分析する.そして,どのようにそれらの阻害要因を乗り越えるかについて,トップダウンおよびボトムアップの両面のアプローチで考察し,提言を行う.



3Vモデルと開発工数を考慮した確率微分方程式モデルに基づく最適メンテナンス時刻の推定方法の提案とその比較

杉崎 航大,田村 慶信,山田 茂


商用ソフトウェアには何らかのオープンソースソフトウェアが組み込まれていることが多い.また,低コスト,保守・運用の容易性などの観点から,クラウドサービスにもオープンソースソフトウェアが組み込まれているケースがある.クラウドサービスの背景には大規模データが存在しており,オープンソースソフトウェアはそこから影響を受けている.そのため,開発工数の予測やシステムメンテナンスのタイミングを測ることは困難である.本論文では,大規模データから受ける影響を考慮し,確率微分方程式に基づく開発工数予測モデルを提案する.また,遺伝的アルゴリズムによりパラメータを最適化し,最適メンテナンス時刻の推定結果を示し,従来の手法との比較を行う.



グローバル競争優位性確保のためのグローバルデジタルオファリング構築にかかるプロジェクトマネジメント事例

木原 純平,宮原 泰人,今井 正,三浦 弘二


競争上の優位性を確保するために、新しいサービスや新しいビジネスモデルを通して、顧客エクスペリエンスの変革をスピーディに実施し、新たな価値を創出することが求められている。銀行を取り巻く環境も大きく変化し、これまでの預金・融資といったコアバンキング中心のビジネスモデルから顧客エクスペリエンスの変革を実現するビジネスモデルへの転換が求められている。我々は、マイクロサービス、API、クラウドベースのアジリティの高いバンキングシステムを、グローバルデジタルオファリングとして予めセミレディメイドで構築するプロジェクトをマネジメントしている。目的は、このグローバルデジタルオファリングを利用することでお客様がスピーディかつ低コストで新たなサービスをマーケット投入できるようになり、競争上の優位性を確保することである。本プロジェクトは、日本とスペインのグループ会社を中心とするグローバルプロジェクトであり、グローバルプロジェクトをマネジメントする上での多くの教訓が得られた。本プロジェクトで得られた教訓の一部を紹介したい。



システム導入後の円滑な業務遂行のためのプロジェクトマネジメントTips

石川 拓朗,喜多 秀仁,中田 智仁


市販ERP等のシステム導入を伴う業務改革プロジェクトでは,本来,業務効率化等の効果刈り取りが目的であるにも関わらず,システム導入まででプロジェクトが終了することが多い.この場合,開発時の様々な制約で見送られた業務機能の整備や業務定着化活動に必要なリソースの確保ができず,効果刈り取りまで達成出来ないプロジェクトが発生する原因になる.本稿では,システム導入段階から業務定着化を見据えてプロジェクトマネジメントを行う手法を提案し,実プロジェクトへ適用した事例を基に有効性と課題を考察する.



大規模プロジェクトにおける性能試験取りまとめ術
- --コロナ禍におけるコミュニケーションマネジメントの工夫と挑戦-- -

豊島 直樹


大規模プロジェクトについては,PMBOKの知識エリアの一つである「ステークホルダーマネジメント」を行うにあたり,大きな労力を必要とする.またその中でも性能試験についてはどのIT業界でも課題となる試験であり,その取りまとめを行うにあたり,各アプリケーションの特性やアプリケーション所管部署の担当者を効率的に短時間,少ない労力でまとめ上げるには,適切なリスク対策とそれに応じた体制組成が非常に重要である.混沌とした状況を打破するために必要な人材,チームビルディングを都度状況に合わせたアプローチにて個々の課題を解決させていく.コロナ禍という状況を逆手に取り,日次でGoogleMeetを使った進捗状況の確認とトラッキングを行ったが,コロナ禍であるからこそ毎日のコミュニケーションの重要性が際立った結果となった.本稿では具体的な体制イメージとトラッキングの方法を交えながら達成した成果を紹介する.



「できる」を目指したプロジェクト管理授業の試行

高橋 圭一


本学科2年向けのプロジェクト管理という講義を2004年度から担当してきた.本科目ではPMBOKの基礎やプロジェクト管理ツールの使い方を教示してきた.一方,本科目の受講生が3年次のチーム開発の演習でスケジュール管理さえできない様子を目の当たりにし,「できる」ことを目指して本科目の授業計画を見直すことにした.具体的には,PMBOKの知識は演習に必要な最小限とし,その知識をもとに小課題に繰り返し取り組めるように計画した.本稿では,2019年度に開講した本科目の授業計画および試行結果を報告する.



GUIを考慮した深層学習に基づく最適メンテナンス時刻の推定と最適プロジェクト人員数の推定

柳澤 拓,田村 慶信,山田 茂


ソフトウェアの品質を考える上で,ソフトウェア信頼性は重要な品質特性の1つである.また,オープンソースソフトウェア(以下,OSSと略す)は低コスト,標準化,短納期といったメリットから多くの組織に利用されている.しかしOSSの開発形態において,明確なテスト工程がないことからOSSの品質やセキュリティに多くの人たちが悩まされている.今後,OSSの普及はさらに高まることを考えると品質の向上は重要な課題になってくる.また先行研究において,OSSのバグトラッキングシステム上に登録されている大規模なフォールトデータおよびOSSの各バージョンのGUI(Graphical User Interface)を考慮した投入開発工数予測モデルが提案されている.本研究では,先行研究において提案されたモデルを用いて,メンテナンス前と後の開発工数を定式化し,総開発工数に基づいた最適なメンテナンス時刻を推定する.さらに,推定された最適なメンテナンス時刻に基づく目標となるプロジェクト人員数を推定する.



ユーザー系IT企業におけるモブプログラミング導入とプロジェクト・マネジメント観点での活用方法の提案

北原 卓実,平田 美由紀


モブプログラミングはアジャイルチームの協働の手法の一つであり,問題解決やメンバーのスキルアップに効果がある.その効果に着目してユーザー系IT企業でのシステム開発プロジェクトにモブプログラミングを試行導入したところ,プロジェクト・チーム育成につながる有益な効果が認められた.そこで本稿では,プロジェクト・マネジャーがモブプログラミングを通してプロジェクトの人的資源マネジメントが適切に行えるようモブプログラミング計画書を考案し,当計画書の検証を行い有用性の確認を行った.



プログラムマネジメントにおけるリモートワーク環境構築についての考察

高橋 新一


働き方改革や業務効率化の観点から,多様なワークスタイルが検討されている中,昨今では,新型コロナウイルス感染リスク対策として,一層のリモートワーク環境構築に対しての要求が強い状況となっている.システム開発やシステム保守の対応が求められるプログラムマネジメントでは,リモートワーク環境の立案から実施,運用に対してもプロジェクト間での依存関係や移行方法などに考慮事項が多数存在する.本論文では,プログラムマネジメントの観点からリモートワーク環境構築に関しての考察を行う.



自動生成ツールを活用したアプリケーション開発におけるプロジェクトマネジメントの考慮点

丹羽 祥臣


近年,ビジネスの推進にITシステムの活用が不可欠になったことに伴い,アプリケーション開発においても短納期・低コスト・高品質が求められる傾向が加速している.このような背景に対して,著者がPMとして担当したシステム開発プロジェクトのWebアプリケーション部分において,「開発期間の短縮」・「品質の向上」を狙いとして「ノンプログラミングでWebアプリケーションを自動生成する超高速開発ツール」(自動生成ツール)と謳われている製品を活用した.本稿では,狙いに対しての振り返りを整理し,期待通りの効果が出た部分と,プロジェクト計画時に考慮すべき注意点を論ずる.



ユーザ系IT企業におけるアジャイル導入事例
- アジャイル未経験組織が実践した選択的な活用 -

原口 直哉,佐々木 智尋,山田 秀徳


市場の変化が著しいビジネス環境においては,アジャイル開発を用いたプロジェクト管理手法が適しているとされている.一方で,日本では欧米諸国と比較してアジャイルの普及が進んでいない現状にある.この要因には,アジャイルの実践には自律型組織が求められること,アジャイルを導入しようとしても知識やスキルが習熟していないことなどが挙げられる.本論文では,ユーザ系IT企業におけるアジャイル未経験の組織が,どのようにアジャイル技法を取り入れたかについて,実際のソフトウェア開発プロジェクトで適用した事例を紹介する.



コロナ禍におけるオンサイト開発プロジェクトでのリスク管理の実践

吉津 充晃


新型コロナウィルス感染症の世界的な流行に伴い,生活環境や働き方に大きな変化が迫られている.プロジェクト活動においても同様にコロナウィルス蔓延予防を兼ね,リモートワークが推進されるなか,環境制約に伴い,オンサイト作業が必須となるケースも少なくない.オンサイト作業が必須となるプロジェクトでは,感染者が発生した際の業務影響が大きく,事業継続の観点から対応を行なっていく必要があると考える.筆者は,プロジェクトマネージャーとして,オンサイト開発プロジェクトでコロナウィルスパンデミックを経験し,プロジェクト活動の中で実践したリスク管理や変更管理,感染リスクの低減策に関する考察を行った.得られた知見から,コロナ禍におけるオンサイト開発時に考慮すべき点について整理し,対応策について検討を行なった.今回整理した内容はあくまで一事例の検討結果である.今後,プロジェクトの特徴やその他事例を含めた検討を行うことで,より効果的な対応が可能になると考える.



OSSに対するディープラーニングに基づく移動平均線とボリンジャーバンドを用いたEVMによる進捗管理手法と適合性評価

多田 幸二郎,田村 慶信,山田 茂


現在,多くのオープンソースソフトウェアが開発されている.その一方で,世界中の人々が様々な環境下でオープンソースプロジェクトに関係していることや明確なテスト工程が存在していないことにより,オープンソースプロジェクトの進捗管理は難しいという問題がある.本論文では,ディープラーニングに基づく実際のオープンソースソフトウェアに対する進捗管理を行う.主に,既存の研究による提案手法を改善し,EVM(Earned Value Management)に移動平均線とボリンジャーバンドを適用してオープンソースプロジェクトの進捗管理への適用を目指す.実際のオープンソースソフトウェアのフォールトデータを使用した EVM の評価指標の数値例を示す.さらに,RMSE を用いて,既存手法と本論文での提案手法を比較して優位性を確認し,考察を行う.



製造業におけるミッションクリティカルなシステム構築のリモート作業化の実践と課題

湊 陽介


現在,多くの企業にとって新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策としての,主たる勤務地を自宅やそれに類する拠点に移し活動を行う,リモートワークの推進が急務となっており,IT企業もその例外ではない.しかしながら,すべての企業活動をリモートで行える企業は多くはなく,そもそもすべての企業活動をリモートで行うべきなのか等については,議論が分かれる.今後,多くの企業はその時々の制約条件やコスト,リスク等を考慮し,リモートとオンサイトでの働き方を織り交ぜて事業を行っていくことが予想される.このような状況に際して,本論考の前半では,著者が経験した,製造業のお客様向けの24時間365日稼働を求められるミッションクリティカルなシステム構築のプロジェクトで得た経験をもとに,リモートワーク推進を阻害する要因を例示するほか,他プロジェクトでの事例や,IT産業外でのリモートワーク推進における諸問題を概観する.後半部では,これらの事例で見られたリモートワーク推進を阻害する諸要因やリモートワーク推進の成功要因について体系化を試み,リモートワーク推進に向けてどのようなアプローチを行っていくべきかについての提言を行う .



プロジェクト初期段階における成功予測:プロジェクトマネージャーの知見を継承した機械学習モデルの構築

浦田 敏


プロジェクトマネジメントにおいて,早期段階でプロジェクトの成功に向けたアクションに繋げる方法が求められている.本論では,機械学習を用いた新たなプロジェクトのモデル化手法を提示する.このモデルにより,上流工程時のプロジェクトの状態評価を基に,プロジェクト完了時点の品質,コスト,納期,顧客満足度に関わる要因が予測可能となった.予測結果からは,従来の手法よりも精度が高まる可能性の示唆を得た.当該モデルを活用して具体的なアドバイスをリコメンドする方法についても提示する.これまでプロジェクトを跨った共有が困難であった知見の共有方法が提供されることで,プロジェクト実行フェーズにおける早期かつ具体的な改善対策に役立つ.



ショートケースを用いたケースメソッド教育におけるオンライン研修への移行

鈴木 賢一,森本 章,杉本 吉隆


当社では2011年度からプロジェクトマネージャー向けにショートケースを用いたケースメソッド研修を実施している.本研修の受講者は1回あたり最大6名までの少人数制にもかかわらず,現在までに2000名近い受講者が受講し,順調に研修を実施してきた.今回のコロナ禍の中,従来の集合形式研修では開催できなくなり,受講者,講師ともに在宅でのオンライン形式研修に移行してきた.本稿では、集合形式研修とオンライン形式研修の違いや,研修で使用するツールの評価,オンライン移行に伴う工夫や課題,メリットやデメリット,オンライン形式研修における今後の展開について述べる.



双方向オンライン環境におけるシミュレーター演習による初学者向けプロジェクトマネジメント教育の事例

三好 きよみ,酒森 潔


東京都立産業技術大学院大学は,社会人向け大学院であり,情報アーキテクトコースの中でプロジェクトマネジメント教育を実施している.本年度は,新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)の拡大を受けて,双方向オンライン環境で授業を行っている.本報告では,プロジェクトマネジメント教育の1つであるシミュレーター演習科目を双方向オンライン環境で実施した事例を紹介する.本科目において実施したグループ演習の実施状況、および学習状況について報告する.



マルチステークホルダープロセスの事例による課題の抽出
- 自治体での社会課題解決のための事例を分析した結果 -

浦田 有佳里


Covit19後の社会,社会全体が変わっていくことを多くの人が感じている.SDGsやSociety5.0などは,人と共に地方に広がっている.また,自治体や行政において,地域課題の解決は重要である.自治体は多くの施策を進めているが,多様なステークホルダーを巻き込み進めていく必要があり,利害関係から施策の推進がなかなか出来ない状況が見られる.本論文では,1992年のブラジル,リオでの地球サミットで採択されたアジェンダ21から始まっているマルチステークホルダープロセス(以降、MSP)の適用について、地域や自治体での事例を調査する.また,MSP実施事例を比較し,特徴の違いや特徴によるMSPを実施するうえでの必要な人材スキルを抽出する.



ニューノーマルによって求められるコミュニケーションDX

五領 舞衣


COVID-19により,私たちは今までの働き方を変える必要性に迫られた.働き方が変わることに伴い,コミュニケーションの場も従来の対面からオンライン空間へと移行した.対面でのコミュニケーションが減ったことで,情報連携やコラボレーションが難しくなっており,デジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性は高まっている.本稿では,オンライン上のコミュニケーションを改善するためのDXの取組みとして,コラボレーションツールの活用スキルを証明するバッジ制度の仕組みや,エンゲージメント向上のためのオンライン上の取組み,全社横断的な業務でのツール活用を紹介する.これらを実施することにより,オンラインコミュニケーションの文化の醸成を行うことができた.今後の展望として,引き続きツール活用の文化を醸成し,オンラインであっても従来以上のコミュニケーションが実践できるようにしていく.



プロジェクトマネジメント疑似体験ゲームにおけるファシリテータの役割と要件

石 一智,荒添 雅俊,下田 潔,新野 毅,関 純,甲斐 賢,内田 吉宜,岡田 久子,伊東 昌子


プロジェクトマネージャー育成のために実務経験の乏しい実務者が疑似的なプロジェクトに参加して偶発的に遭遇した状況特異な問題の解決策を学ぶことのできる学習環境として、プロジェクトマネジメント疑似体験ボードゲームを開発し運用して来た。プロジェクトで発生する問題を解決するには問題の背景状況に加えて解決方針の策定へと向かう拡張的状況モデルを構築することが必須であることから、ゲームのファシリテータには多くの実践経験があるプロジェクトマネジャ経験者を起用した。ゲームで解決すべき問題が与えられた時、経験の浅いプレイヤーが考える問題解決モデルと、ファシリテータの多くの実践的エピソード知識から構成する拡張された状況モデルとは異なっていた。ファシリテータはゲームの進行プロセスにおいて、この違いを感知し適切な助言を与えることで、プレイヤーに問題発生背景状況ストーリー構築の重要性を理解させ類推的に適切な実践知を会得できるようにしていることが推測された。本稿では、ファシリテータが問題状況に埋め込まれた実践知をどのようにプレイヤーへ語り伝えて伝承しているかを観測し、ファシリテータの役割を分析してファシリテータに求められる適正な要件を検討した結果を報告する。



ニューノーマル時代における新入社員研修の在り方の一考察

鈴木 加代子,中村 浩紀,西野 晶子,杉山 志保,中島 雄作


2020年4月,日本では,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,複数の企業が新入社員研修の短縮や延期や中止に変更を余儀なくされた.筆者の所属会社においても,3か月間の人事担当主催の新入社員研修の全てについて,集合形式で計画されていたものを,TV会議もしくは自主学習に急遽切り替えた.その結果,様々な事柄が見えてきた.筆者らは,次年度以降も今回の研修形態を採用する方向で考えている.そこで,PMBOKの知識エリアに基づき,筆者らが気付いたメリット,直面した問題とその対策,今後の課題等について整理した.本稿では,ニューノーマル時代における新入社員研修の在り方の一考察について述べる.



官公庁プロジェクトのリモートワーク化のケーススタディとマネジメント方法の工夫に関する調査や考察

松原 健


現在,新型コロナウイルス感染症対策によって,世界規模で”NewNormal”といった新たな働き方が注目されている.プロジェクトマネジメントにおいても大きな変革が求められており,今後,様々な調査やケーススタディが行われると推察される.筆者は,官公庁のお客様を相手に,プロジェクトマネージャーとしてサービスを提供しているが,2020年4月から,初めてリモートワークをベースとしたマネジメント活動をすることになった.本文ではケーススタディとして,プロジェクトマネジメントのリモートワーク化による対応方法と工夫に関する調査や考察を行った.得られた知見から,リモートワークによるデメリットや今までの代替手段だけでなく,より有効な新たなプロジェクトマネジメントについて検討を行った.特にステークホルダー・コミュニケーションの考察において,新たな働き方への大きなヒントとなり得ると推察する.



納期優先の大規模システム開発におけるSEPGによるソフトウェアプロセス改善の一事例

加藤 雅也,坪井 豊,古谷 仁志,藤沢 俊三,中島 雄作


NTTデータでは,プロジェクトマネージャーの負担を軽減し,開発プロセス・管理プロセスの技術者としてプロジェクトの円滑な遂行を支援する「プロジェクト内SEPG」を定義し,人材育成と展開を進めている.本稿では,前述の「プロジェクト内SEPG」の活動の一事例として,納期優先の大規模システム開発におけるSEPGによるソフトウェアプロセス改善の一事例について述べる.特に,品質マネジメントとスケジュールマネジメントの改善活動において,「品質保証ストーリーを守る前提で,全方位的なマネジメントの改善活動を回し,納期を必ず遵守する」というプロジェクト方針のもと,SEPGが下した究極の取捨選択について述べる.



プロジェクトマネジメントへのアジャイル思考活用における考察

岡部 雄一


ITプロジェクトを取り巻く環境がより複雑化・多様化してきており,マネジメントの難易度が上がってきている.特に,ビジネス環境の変化への迅速な対応が求められており,この課題を解決する方法の一つとして,アジャイル型開発が注目されている.本稿では,プロジェクトマネジメントの手法として,アジャイル型開発の考え方を取り入れた事例を報告し,そのマネジメントの結果と有効性について考察する.



パーソナルプロジェクトに対するゲーミフィケーションの活用によるモチベーション向上手法の提案

丸山 達也,下村 道夫


パーソナルプロジェクト(以下,PPJ)とは「独自性や有期性のある個人活動」を指す.PPJを行ううえで重要な要素の一つにモチベーションの維持があるが,それが困難な場合がある.一方,ゲームにはモチベーションを維持させる要素が多く備わっており,それをゲーム以外に適用する手法としてゲーミフィケーション(以下,GF)がある.GFを適用する場合は,任意のゲーム要素を付与すればモチベーションが向上するとは限らず,個人のゲーマータイプなどに依存する好みのゲーム要素を加える必要性があると考えられる.本稿では,モチベーションの維持が難しい場合があるという問題を有するPPJに対して, GFを適用することでモチベーションの向上を図る手法を提案する.



個人に応じたプログラミング学習方法選定手法の提案

細谷 直紀,下村 道夫


小学生のプログラミング教育が必修化され,現在では小学生から社会人までプログラミングを学習する機会がある.プログラミングモデルには,英数字のみを用いるテキスト型やブロック図などを用いるビジュアル型が存在する.一般に,プログラミング学習方法は,多種多様なプログラミングモデルや言語の中から学習者自身の暗黙知にもとづいて選定されている.このため,選定した言語の難易度が高すぎることに起因する挫折や,逆に難易度が低すぎることによってモチベーションが続かない等の問題が存在する.本稿では,個人の経験や意識などから持続的な学習を可能とするプログラミングモデルや言語を形式知にもとづいて選定する手法を提案する.



AI導入におけるプロジェクトマネージメントの在り方

岩田 歳信


近年,機械学習やディープラーニングなど,いわゆるAI(人工知能)の活用に対するニーズが高まりつつあるが,注目度が高いにもかかわらず,その導入実績は未だ数少ない状況にある.多くの事案が概念実証(Proof of Concept:PoC)を行うものの,その段階に留まり,実用化に向けての本格的な導入を目指すケースは決して多くは無い.これには機械学習の技術特性に起因する部分が大きいと考えられる.筆者が実際の導入に関わってきた事案を元に,実用化の導入を阻害するプロジェクトマネージメント上の課題と,それらを見据えた上でのプロジェクトのマネージメントの在り方を考察する.



プロセスマイニング技術を活用した新たなプロジェクトマネジメント技法の提案

溝渕 隆,遠山 曉子,仁尾 圭祐


システム開発プロジェクトが失敗する原因の一つとして「有識者(専門家)不足」を挙げるプロジェクトマネージャーは多い.PMBOKのツールと技法においても「専門家の判断」は全ての知識エリアで必要とされているが,実際のプロジェクトにおいては様々な制約により専門家を十分に用意することは難しい場合が多い.本研究では,「専門家の判断」不足を補う技法としてプロセスマイニング技術の活用を提案するものである.プロセスマイニングでは,専門家が不在の状態でも,実際に稼働しているシステム内のイベントログデータという客観的データを入力とすることでビジネスプロセスの抽出・プロセスモデルの作成・プロセスを通るイベント数の定量化が可能である.この特徴を利用し,システム開発におけるスコープ・品質・リスク・マネジメント領域における「専門家の判断」を代替するシステマティックな手法として考案した.



納期必達の大規模レガシーシステム再構築(モダナイゼーション)における取り組み

浅井 重雄


DX(デジタルトランスフォーメーション)実現において,多くの企業で足かせとなるのがレガシーシステムの再構築である.特に大規模レガシーシステムとなると,10 年以上も前に開発したシステムに改修を重ねながら使い続けているケースもあり,再構築の際はブラックボックス化した既存システムの仕様を踏襲しつつ,新たな機能の追加要望にも対応しなければならない場合がある.そしてそれが納期必達プロジェクトとなれば各段にリスクが高まり,超高難度プロジェクトとなる.本稿では,当社における大規模レガシーシステム再構築事例をもとに,プロジェクトにおける具体的な対応策や考慮事項について述べる.



機械学習エージェントとプロジェクト挙動シミュレータを用いたプロジェクトマネジメント研究の意義

岡田 公治


Society 5.0 やDX (Digital Transformation) が求められる中でプロジェクトを取巻く環境が大きく変化している.それに伴い,プロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネジメント研究の重要性が高まっている.本稿では,計算機シミュレーションに基づくプロジェクトマネジメント研究の概念と限界について整理し,機械学習エージェントを用いる利点について議論する.また,そのような研究アプローチを,更に有益なものとするために克服しなければならない機械学習エージェントおよびプロジェクト挙動シミュレータの技術課題を, (1) プロジェクト挙動シミュレータの表現力の向上,(2) 機械学習における情報量の削減,(3) プロジェクトを取巻く環境のシミュレータの実装の3点から整理する.



非対面コミュニケーションにおける積極的傾聴の有用性に関する考察

川畑 有実


昨今,働き方の変化に伴い,コミュニケーション手段も多様化している.新型コロナウイルスの影響により,社会全体でテレワークが推進されており,直接対面しないコミュニケーションが以前よりも増えている.顔が見えない画面越しの非対面コミュニケーションは,相手の表情や態度等が伝わりづらく,誤解や認識齟齬が生じることがある.カール・ロジャーズが提唱した積極的傾聴がプロジェクトでのWeb会議等の非対面コミュニケーションの場においても有効であると仮説を立て,実際にプロジェクトにおいて実践した結果をもとに,円滑なコミュニケーションのための積極的傾聴の有用性について考察する.



新規事業におけるシーズベースのピボットの意義と方法

金澤 浩平


SIerの新規事業でよくある言説は,「企業の想いで製品を作るより,顧客に話を聞いて,彼らが欲しいというものを作った方がうまくいく」だ.だが現実には,顧客の話から製品を作ったのに購入してくれない,COVID-19の影響で顧客が購入できなくなった,という不幸が起こる.人材を育て,製品も開発したが,顧客が不在という状況で,新規事業担当者はどう舵を取るべきか?事業の評価は,生産性で決まる.生産性 =(顧客数 x 製品の価値) ÷ 投資額 である.乃ち生産性を高めるには,顧客を増やす,製品の価値を高める,投資額を節約することが求められる.ところが,「この製品を欲しい顧客はいない」状態では,増やす顧客もいなければ,高める価値もない.この時,まず新規事業担当者がすべきは,ゼロからのやり直しではない.育てた人材と開発した製品を「全く異なる顧客に対して,異なる価値を提供する」事業に生まれ変わらせることだ.これにより,追加の投資額を最小限に抑え,生産性の悪化を低減できる.本論文では,著者の新規事業の経験を基に,左記の手法のフレームワークを論じる.



アクティブラーニング形式のプロジェクトマネジメント教育をリモート化できるのか

櫻澤 智志


新型コロナウィルス感染症対策により,大学での講義は対面ではなくリモート形式を主体に実施せざるを得ない状況が続いている.筆者が当学会にて何度か紹介したプロジェクトマネジメント講義はアクティブラーニングを中心とした構成であるため,リモート形式での授業に移行するには多くの課題や制約が存在する.それを解決する一つの手段は「企業で導入したリモートワークをそのまま体験してもらう」である.ケーススタディに沿ったリモートディスカッションにより,社会人になって必要なコミュニケーションやマネジメントスキルの基礎を習得できる構成とした.ニューノーマル時代の幕開けに,筆者含む講師陣は,学生の気づきから何を学び,企業活動にどう生かすのかを考察する.



海外市場を見据えた”ARモバイルアプリ”のUI設計における気付き

野中 晃,横山 敦弘


近年,日本においても多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(以降,DX)の推進に舵を切り始めている.現在,データとICTの活用は,効率化やコスト削減の手段としてだけでなく,新たな競争力を生み出す源泉ともなっている.加えて,クラウドベースでのデータ管理も一般的となりつつあり,データの保管場所に依存されず,世界にビジネスを展開することが可能になっている.世界にビジネスを展開していく際に,WEBアプリケーションやモバイルアプリケーションのUIやUXデザインは,国や人によってアイコンの色や形が意味する内容の捉え方が異なるため考慮をする必要がある.本稿では,海外市場展開を焦点に当てて,ARモバイルアプリケーションの開発を行い,シンガポールでPoCを実施した中で気付いた,海外と国内のUI設計における考え方の違いについて説明する.



変化に対処するスキルとしてのPM capabilityの活用

宮田 寛子


2020年,世界はCOVID-19により劇的な変化を遂げた.これを契機にIT技術も高速に進化している.DX推進に対する関心も高まっている.このような環境の激変に対処するために,PM capabilityは大いに活用できるのではないか.PM capabilityはPMだけが必要とする力ではない.当社ではPM capabilityの有用性に着目し,3年前から新入社員にProject Management教育プログラムを実践している.本稿では,当社のProject Management教育プログラムを紹介するとともに,特にコミュニケーションマネジメント,リスクマネジメントについて変化に対処できる力としてモデル化を試み,PM capabilityの広範な活用の可能性を考察する.



二次分析に基づくプロジェクトマネージャ所得の決定要因に関する考察

一柳 晶子


プロジェクトマネージャの仕事は多岐にわたるが、フレームワークに沿ったプロジェクトマネジメント能力は認定資格により証明することが可能である。日本でもプロジェクトマネージャ認定資格は、部下に取得させたい資格、昇進に役立つ資格として人気も高く、取得者数は増加している。グローバルレベルのプロジェクトマネージャの給与調査の結果では、認定資格保有者の給与所得は平均より22%多いとされている。ところが、日本のプロジェクトマネージャの給与所得は認定資格の有無による変化が少ない。それは本当なのか、もしそうなら、それはなぜであるか。本稿では、プロジェクトマネジメント領域業務に従事する人々の給与所得決定要因について2次データ分析により考察する。



未来社会構想を題材としたスコープマネジメント教育の試み
- 空飛ぶ車社会のデザインとWBSに関するワークショップ -

都甲 康至


一般的に技術をベースにした製品の寿命は数年で、顧客のニーズをベースにした製品の寿命は約10年と言われている。持続可能な社会を創造するためには30年から50年先の近未来を描くことができるスキルを持った人材の育成が重要である。本稿は、デザイン戦略を学ぶ大学院生を対象に行った新たなPM教育に関する方法論(特にスコープマネジメント)に関する試行実践である。PM授業では、まずグループ毎に近未来の空飛ぶ車社会をさまざまなデザイン方法論を用いて自由に構想し、次にそれを具現化するために必要な検討項目を、WBSを用いて図解表現し、最後にグループごとにプレゼンテーションを行った。結論として、題材として設定した未来社会については、多くの学生が大変興味を持った。ただし、プログラムスコープやWBSについての修得度については不十分で、今後授業内容の改良の余地があると思われた。



グレーゾーンの障がいに関するダイバーシティーについての対応の一考察

西條 幸治


不確実性の増す時代背景の下,自律型の取組みが推奨され,また,働き方改革やSDGsと言った流れを受けて,多様性を鑑みることが求められるようになってもいる.コロナ禍により,これらが加速する中,プロジェクトマネージャはそれらに対応した運営を行うこととなる.かつて,メンタルヘルス研究会からプロジェクト憲章へのケアに関する記載を促す提言を含む発表があったが,同様にプロジェクトの活動の根幹に据えるべき事柄としてこれらを扱う状況にあると考える.この論文では,著者自身が軽度難聴等の問題を抱える身として,少数派を考慮したプロジェクト運営のための取組みとして,検知や考慮点を考察する.聴覚障がいや発達障がいに関して,障がい者手帳を得る程度ではない問題を抱えたものの事例として自身を挙げつつ,前者についてのオージオグラムや語音聴力検査があるように,後者について,医師の診断の他に,視線による検査や唾液によるオキシトシン受容体遺伝子多型解析といった取組みがなされ,それぞれ臨床試験中,開発中の状態にあり,これらの活用を考えつつ,これらを要因として病にかかることを防ぐ取組みを考察する.この方向性の是非を問うことをこの論文の本旨とし検証などは次の研究の課題とする.



ITサービス企業におけるPM知識国際移転への影響要素に関する考察
- 多国籍組織間知識移転の主要素としての組織価値体系に関する事例研究 -

遠藤 洋之,内平 直志


経営知識の国際移転に関する研究は, 製造業の生産管理知識移転次いで流通業の販売管理知識移転を中心として進められてきた.またITサービス業においては業務管理知識の移転研究が, 米国発注・インド受注型Global Delivery Modelや, 日本発注・中国受注型オフショアモデルにおける, 発注元から受注先へのソリューション開発プロジェクト管理知識移転を対象として行われてきた.何れの業界の知識移転においても移転元・移転先両国間の特性比較が研究の中心であった.筆者らはITサービス産業のプロジェクト管理知識移転における移転元と移転先の特性比較においては国に属する特性同様に考慮すべき要素があるとの仮説を立て事例調査を行った.先ず(1)PMアセスメントの結果から知識の送り手(本社)と受け手(現地法人)の知識伝達/吸収能力の乖離は教育等により埋められること, 次いで(2)日系ITサービス企業のAPAC現地子会社におけるPMワークショップ実施後のアンケートへのPM回答から各PMの価値体系(Q/C/D優先順位等)・属性(所属組織等)の情報を得て, これらを元に PM特性の定量分析を行った結果, APAC地域宛プロジェクト管理知識移転研究の分析評価において, PM及びPMが所属する組織の持つ価値体系特性も国別の特性同様に考慮すべき要素であり,多国籍ITサービスプロジェクト管理知識移転時の留意点であることがみとめられた.



PMの社会貢献活動とウェルネスについて
- 「メンタルヘルス研究会」紹介を兼ねて -

野尻 一紀


社会貢献活動に関心のあるPMは多いと思います.本講演では筆者の社会貢献活動の「はじめの一歩」,「枠を超えて」活動することの意義,活動で活用したプロジェクトマネジメント手法についてお話しします.社会貢献活動とウェルネス向上の関係についてもお話しします.併せて私の所属する,「メンタルヘルス研究会」の活動紹介をします



個人の学びを最大限に発揮する 人材育成「HRD3.0」
- ~ニューノーマルに必要な2つの「繋がり」~ -

柏 弘樹


当社では2014年に提唱した「自ら学ぶ人を育てる」というテーマのもとに新人研修を実施してきた。更に近年では自ら学ぶことの次のステップとして「学んだことをチームで発揮する」ことを目指し、自ら決めた目標に対し常に目的意識を持ち、他者と共に共同して経験から学ぶ習慣を身に着けるよう工夫を行っている。学んだことをチームの中で発揮するために、「自分の考えと行動を繋げる」こと、そして「自分と周囲の繋がりを持ち、学び合う」ことが必要であると考え、今年度のカリキュラムを設計した。結果、新人研修が全面的に在宅勤務となった中でも新入社員それぞれが「自分ごと」として物事をとらえ、集団で学び成長し続けることができるようになった。



トラブル事象発生時のプロジェクト・リーダー(PL)へのタスク輻輳回避

大胡 貴志


大規模プロジェクトを推進する上で,担当する各分野、領域ごとにプロジェクト・リーダー(PL)が存在する.プロジェクトが円滑に回っている間は問題とならないが,一度,トラブルが発生すると,トラブル解消に向けた解決策の立案,顧客への説明,社内関係各署との連携,及び,本来あったスケジュールとの乖離を埋めるリプランなどの多岐に渡る調整タスクがPLに対し積み重なり,輻輳する.このPLへのタスクの輻輳がプロジェクト推進上のボトルネックとなってしまう可能性がある.PLへの多種多様なタスクの輻輳をどのように解消し,プロジェクト全体が当初予定した通りの納期,コスト,品質に達するような解決策を提言する.



上流工程からのプロジェクト品質確保方法の考察

若宮 崇


ソフトウェア開発プロジェクトが混乱する要因としては,上流工程で内容が曖昧なまま後の開発工程に着手する,受託側と発注者側のスコープに対する認識齟齬があり,後工程で問題が発生するなど,上流工程に起因することが多い.計画段階,上流工程段階での決定が,業務アプリケーションソフトウェアの開発を伴うプロジェクトの成果に直結する.どのようなプロジェクト計画を行い,上流工程でスコープを確定していくかを明確にしておくことが効果的である.



統括的マネジメント手法による大規模モダナイプロジェクト安定稼働実現
- 開発から顧客担当作業までシステムベンダが牽引 -

河田 裕之


大規模プロジェクトにおける失敗の原因やその施策は世に溢れているが、原因も対策も分かっているのに失敗が繰り返されるのは、これまでとは違う施策や発想が必要であることを意味する。今回携わった大規模システム再構築において、新しい試みとして「顧客は決めきれない、仕様を出し切れない」という前提に、Program & Project Management(P2M)手法に加え、プロジェクト全体をコーディネートするというコンサルタントの要素を取り入れた施策を実践した。大規模プロジェクトでは避けて通れない「顧客合意の難しさ」と、本プロジェクト顧客(食品業A社)特有の「稼働直前まで発生する得意先要件」に対して、システムベンダ(以下ベンダ)と顧客が一体となったプロジェクトマネジメントオフィスを設置することで、顧客との一体感を醸成しつつベンダが主体的にプロジェクト全体をコーディネートし、これまでコンサル領域であった情報システム部門と利用部門の調整合意プロセスにも踏み込み、全ステークホルダを一つにまとめ上げた。今回、単なるシステム開発のマネジメントに留まらず、ベンダが利用部門を巻き込んで全体統制を図っていった点がこれまでにない独自の点である。加えて、顧客と合意できない(握れない)ことは徹底的に抽出し、課題の事前潰し込みと事前に検証できないリスクには顧客とリスクの共有を図ることで、万が一トラブルが発生してもベンダ責になることを回避することに成功した。顧客との関係性もプロジェクト開始当初はマルチベンダ体制であったが、現在はコンサル領域まで踏み込んだプライムベンダとなっている。本ノウハウは大規模モダナイゼーション商談や実際のプロジェクトに直面しているプロジェクトマネージャやプロジェクトマネージャを目指す若手SEの一助にされたい。



過去事例を学習したAIを用いたプロジェクト診断に関する一考察

常木 翔太,中田 隆幸,高田 淳司


近年,コンピュータの高性能化やクラウドでの大量のデータ管理が容易となったことで,「機械学習」や「ディープラーニング」などによるAIを用いた業務の高度化や効率化が可能となってきている.PMO業務においても, AIを使ってプロジェクト活動における企業内の大量のデータを分析することで, 不採算プロジェクトの検知やリスクの早期検知に活用する事例が報告されている.一方, AI活用が進むにつれ, その判定根拠を問われる機会も増加してきている.しかし, ブラックボックスであるディープラーニングでは判定根拠を示すことが難しく適切な根拠が示せないことが課題となっておりホワイトボックス型AIへの期待が高まっている.筆者は,過去のプロジェクト状況報告やリスク報告をAIで学習させ, 判定結果と学習から導き出される結果を根拠として示すホワイトボックス型のAIモデルの構築を進めている.本稿では,このモデルの概要,構築状況および課題を紹介する.



プロジェクトマネジメント義務をベースとしたプロジェクトマネージャ教育の実施成果について

堀 賢志


顧客の経営課題や業務運用課題解決を目的とするシステム開発においては,SIベンダだけではプロジェクトを運営することができない.実務運用上の重要事項は,必ず,顧客の了解をとりながら顧客との協働作業で進める必要がある.しかし顧客と双方協力して行うプロジェクトマネジメント行為について,契約書に明確に規定していないことが多く,曖昧であるためにマネジメントが原因で顧客合意形成が不調となるケースが少なくない.そのため弊社において,プロジェクトマネージャに対し,プロジェクトマネジメント義務と顧客の協力義務を明確にした上で,プロジェクトマネージャとして最低限履行すべき内容の教育を企画し,実施している.本論文では,プロジェクトマネジメント義務をベースとしたプロジェクトマネージャ教育について,その概要,及び実施あたって工夫した点と実施後の受講生の反応について論じる.



システム再構築プロジェクトにおける品質起因のトラブル防止についての考察

脇坂 健


昨今、 SIプロジェクトの大半はシステム再構築の案件が占めている。アジャイル開発手法の活用が増える一方で、大規模な基幹システムの再構築については旧来のウォーターフォール開発手法をベースに再構築特性を考慮・テーラリングして適用されている。その為に、再構築特性の考慮・テーラリングが十分にできないと品質に重大な影響を及ぼしている。そこで弊社では、再構築経験者の暗黙知を形式知化し、再構築の作業プロセスを拡充、体系化した「新SI品質保証体系」を定義している。本論文では、繰り返し発生する再構築プロジェクトのトラブルに対して、「新SI品質保証体系」を活用することにより如何にプロジェクト品質を改善し、トラブル防止に寄与するかを考察する。



AI導入プロジェクトにおける完了条件の定義と完了条件を満たすプロセス

江守 翔一


少子高齢化の進展に伴う労働力供給の減少を補完できる手段としても注目されている人工知能(AI)は年々,導入プロジェクト数が増えてきている.一方で,「AIの分析結果を担保できない」「有用な結果が得られるか不明」といった課題から導入に踏み切れないプロジェクトも存在する.これらの課題は,AIプロジェクトの完了条件がこれまでの「仕様通りに構築できているか確認する事」に加え「ビジネスに価値を与える成果物であるか確認する事」も求められる背景に起因すると考える.筆者がPMとして担当したAI導入プロジェクトでは,完了条件を定義し完了条件を満たした事でQCDを遵守した.また本番稼働後も安定稼働を続けている.本事案を元に,お客さまと共に進めるAIプロジェクトの完了条件の定義ならびに,完了条件を満たすためのプロセスを説明する.



COVID-19濃厚接触者調査効率化の試行
- 濃厚接触者調査にアジャイルの考え方を応用して効率化を試行した事例 -

鳥海 英治


COVID-19の流行により,多数の執務者の中から正確かつ迅速に罹患者または検査対象者に濃厚接触した者を識別する作業(濃厚接触者調査)が日常化しました.罹患者または検査対象者が発生した場合,迅速に濃厚接触者を特定し,在宅勤務を指示して感染拡大のリスクを抑止する必要があります.しかし,実際には専門の医療関係者の支援なしに現場だけで濃厚接触者の特定作業を進めざるをえない状況が多くなります.本稿は濃厚接触者調査を「プロジェクト」と捉え,ソフトウェア開発の現場で適用されているアジャイルの考え方を応用してその効率化を試行した事例についてご紹介します.変化に迅速に適応し,計画に従うよりも変化への対応力を重視するアジャイルのアプローチは,予測できない罹患者の発生に対応し,できるだけ早く必要最低限の結果を提供する,という特徴がある濃厚接触者調査の効率化に応用できる,ということがわかりました.



疑似体験が経験を補完できる条件に関する考察
- DX分野のPM実践知も『ものがたり』により継承 -

吉野 均


現代は,ITプロジェクトのマネジメントの成否が経営を左右するとまで言われる時代にある.だが,ITプロジェクトの成功率は相変わらず低い.本稿では,ITプロジェクトの成功率向上の諸施策の内,PM実践知の継承に焦点をあてる.ノウハウ継承の成功事例から抽出した『世代反復型ノウハウ継承モデル』と比較するとPMノウハウ継承では,本来『経験で継承』すべきPM実践知の継承が困難な現実がある.そこで『経験で継承』を補完する手段として『疑似体験で継承』の取組みが今までも実施されてきた.本稿では,『疑似体験で継承』のそもそもの意義とは何か,どの様な条件が整えば『経験で継承』を補完できるのか,その条件について考察する.この条件を満たす一例である『ものがたり継承法』を提案する.今回その有効性をDX分野で再検証した.



アジャイル開発プロジェクトの円滑な立ち上げのための合意形成の留意点

大島 丈史,原 桂介


近年の市場や顧客ニーズの急激な変化に対して、サービス内容の変更や機能追加等のタイムリーな実施が重要となるため、アジャイル開発の採用が注目されている。しかし、初めてアジャイル開発を実施しようとすると、プロジェクト開始後に、認識の相違やコミュニケーションの齟齬等によるプロジェクトの混乱等が発生することがある。本稿では、アジャイル開発プロジェクトで発生した問題の根本原因分析等により、企業や組織が初めてアジャイル開発に取り組む場合における、ステークホルダ間の合意形成を促進するための留意点を明らかにする。この際、アジャイル開発の本質的なねらいに焦点を当てることで、ウォーターフォール開発とアジャイル開発の共通点や相違点が明確になり、アジャイル開発に取り組む上で特に重要な留意点が導かれる。この留意点を、プロジェクト立ち上げ前にステークホルダが理解することで、合意形成が容易となり、アジャイル開発プロジェクトの円滑な立ち上げが可能となることを、アジャイル開発の推進に成功したプロジェクトでの工夫事例等を交えて示す。



新人PMによる,はじめてのプロジェクトマネジメント経験

高見 健太


プロジェクトマネージャーのキャリア形成においては,プロジェクトマネジメントに関する知識体系の習得に加え,十分な実務経験が求められる.筆者は今回初めてプロジェクトマネージャーとして実業務を担当したが,数々の課題が発生したのに加えて,COVID-19の影響によるスケジュールの見直しやお客様と複雑なコミュニケーションパスといった課題があった.本論文では,筆者のプロジェクト経験を基に,これまでの研修では得られなかった知見を中心に述べる.



DX対応型プロジェクト向け品質監査チェックシートの開発
- アジャイル開発プロジェクトに対する実効性のある品質監査に向けて -

廣瀬 守克


近年,新たなデジタル技術を活用した既成概念にとらわれない新規事業が次々に生まれている.これらの新規事業を支える情報システムは,従来の受託型SI プロジェクトとは異なり,スコープ(要求仕様)が不明確である.言い換えると「予測不可能な世界」といえる.新事業創造の現場では,新規顧客の開拓やビジネスモデルの開発,経営資源の組み換えが発生する.したがって,「要求」自体を探索し帰納的に開発できる方法論として,アジャイル開発が注目されてきている.このような状況の中,アジャイル開発プロジェクトのプロセス品質や成果物品質をどのように評価するのか.あるいは,アジャイル開発プロジェクトのシステム監査をどのように行うのかは,経営者の関心事のひとつであると言ってよい.しかし,多くの企業では,アジャイル開発向けのシステム監査基準や品質マネジメントシステムの構築と運用には未着手である.本論文では,上述の課題を解決するために,アジャイル開発を適用したプロジェクト向けに「アジャイル開発用プロジェクト計画書チェックシート」を作成したところ,興味深い事実が発見できたので報告する.



PM 学会におけるアジャイル関連の研究発表の傾向分析

三好 きよみ,木村 良一,酒森 潔


昨今,社会環境やビジネス環境の変化への俊敏な対応が求められており,デジタルトランスフォーメーションが推進されている.その1つの方法としてアジャイル開発が注目されている.本学会においても,アジャイルに関連した論文が多数報告されてきている.そこで取り上げられるテーマや事象は,学会員が日頃の業務において抱えている問題や注目している動向,社会状況に密接に関係していると考えられる.本報告では,これらを対象にしたテキストマイニングによる分析結果を報告する.分析対象としたのは,1999 年から2020年までの間に春季・秋季のプロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集に掲載された論文の各要旨部分である.各論文要旨を発表年で2つの時期に分けて各時期の特徴を分析した.その結果,発表論文の傾向は,プロジェクトの課題に関することから,企業としての課題に関することへと変遷していることが示された.



アジャイル開発におけるチームの成熟度に基づいた品質管理

町田 欣史


日本のソフトウェア開発においてもアジャイル開発が一般的になってきた。短期間で行われるアジャイル開発では、十分な品質のプロダクトをどうやって開発するか、そしてどうやって品質を管理するかという課題に直面することが多い。アジャイル開発では、品質を検証する基になる仕様が曖昧であったり、障害の記録を残さないことがあったりするなど、ウォーターフォール開発の品質管理で使用していた情報が不足していることがある。このような状況で、開発したプロダクトの品質を管理し、保証するための方法として、プロセス品質などの代用品質を用いるのが一般的である。アジャイル開発においては、チームとして活動し、成長することが重要であるため、チームの成熟度や健全性を表すリソース品質を代用品質として使用することを仮説として提案する。本稿では、この提案に至る考え方を示すとともに、仮説の検証について紹介する。