2021年春季 発表要旨一覧

「イノベーションプロジェクトのプロジェクトマネジメント」の検証
- テムザックの事例研究 -

吉田 憲正


「イノベーションプロジェクトのプロジェクトマネジメント」吉田(2012)で,イノベーションプロジェクトの成功要件は,プロジェクトマネージャー(以下PM)のイノベーションの元になった「感情の知」と粘り強い姿勢,その個人を排除しない組織,PMの「ストーリー」の理解者や協力者,そして,PMを理解しサポートする経営者の4点だと論じた.また,イノベーションプロジェクトは,既存の管理部門に任せてはならない,とも指摘した.今回2012年論文検証として,サービスロボットやワークロイドのイノベーション企業であるテムザックの事例研究を行う.更に関連して,「イノベーション・マネジメント-イノベーション・マネジメントシステム-ガイダンス」ISO56002(2019)について,考察する.



基幹システム保守フェーズにおける組織間協働モデルの提案
- 製造業A社の事例研究 -

越智 裕一,内平 直志,佐藤 那央


基幹システム保守フェーズでは積極的な機能改善・有効活用のために、利用・保守組織が協働して計画的・効率的な保守業務を遂行することが求められる。改善要件を網羅的に把握し全体最適となる機能改善を実行する事が有効であるが、改善要件を網羅的に把握するにはシステム利用者が様々な情報を基にして改善点に気づき、要望発信を行う必要がある。本研究では外部情報収集を行い組織内部へ情報提供する役割を持つゲートキーパーと全体的なプロセスを示すゲートキーピングの先行研究を基に、情報の受け手の特性に着目してシステム利用組織・保守組織の事例研究を行った。その結果、システム利用者には気づき・要望発信の行動に4つのパターンが存在し各パターンには課題が内在する事を明らかにした。この結果を基に、課題に対するゲートキーパーの新たな役割とプロセスを組み合わせた基幹システム保守フェーズにおける組織間協働モデルを提案する。



シニア社員による経験とノウハウの伝承に関する提言

松田 章


プロジェクトマネジメントはPMBOKのような体系的な知識だけでなく,経験や失敗事例から学ぶノウハウも重要な知識である.プロジェクトマネジャー,いわゆるPMは知識だけでなく,多くの経験やノウハウを持っている.しかし,PMが定年により職場を離れたり,継続雇用されていてもノウハウを残す仕組みがないため彼らの財産を有効に生かすことができていない企業は少なくないと思う.私は定年を間近に控え,自身が今まで習得してきた経験や失敗事例を文書化し,ナレッジシステムや社内SNSの活用,教育の講師を担当するなど次世代に伝える方法を模索して,実行してきた.その結果,ノウハウを伝承するためには個人の努力だけではなく,企業としてもPM経験のあるシニア社員(定年後再雇用された社員)から豊富なノウハウを収集して伝承するための制度や環境づくりが必要であることがわかってきた.本稿では私が実施してきたノウハウの伝承事例を通じて,次世代のPMに,プロジェクトマネジメントに関する経験とノウハウを伝えるために必要な施策を提言する.



PJ品質向上のためのPMエンゲージメントレベルの高め方

杉野 晴江


近年、従業員がやりがいや働きがいを感じ、主体的に業務に取り組むことができる環境を創りあげる必要性が示され、従業員のエンゲージメントスコアの向上が営業利益率、労働生産性にプラスの影響をもたらす事も証明されている。このような状況の中、プロジェクトマネージャのエンゲージメントをどのように向上させ、プロジェクトの品質と生産性を向上させるかは、経営層の関心事の一つである。本論文では、プロジェクトマネージャがやりがいや働き甲斐を感じエンゲージメントをあげる為の一般的な考え方を施策へ適用した具体的な事例を以って、これらの施策の適用時の経験と教訓を報告する。



アジャイルPM研究会における活動内容と成果
- ウォーターフォール開発経験者のアジャイル開発に関する知識習得 -

鈴木 由恵,三好 きよみ,佐藤 正博,佐藤 大介


昨今,政府によるデジタル庁設置など,デジタルトランスフォーメーション化は益々加速している.その 1 つの実現方法としてアジャイル開発は,ビジネスの現場においても無視できない存在になっている.また,アジャイル手法は,ビジネス価値の醸成を目的としている点が評価され,適用を検討している企業も多い.その一方で,適用を検討している側には,ウォーターフォール開発経験者が多く存在し,アジャイル開発についての知識スキルの不足がみられる.本稿では,アジャイルPM研究会に所属するウォーターフォール開発経験者が,アジャイルPM研究会活動とその分科会であるWG活動によって,アジャイル開発の技法やマインドセットを習得していった成果について報告する.



超上流工程におけるスコープギャップ抽出に関する一考察

小長谷 聡


システム構築プロジェクトにおけるリスク要因は,スコープ,スケジュール,資源の各領域に大別される.その中でもスコープ領域が占める割合は高く,特にスコープギャップとスコープクリープが大半である.新規ユーザにおけるシステム構築においては,顧客・ベンダ相互のシステム構築でのプロジェクトの推進方法や役割分担・前提条件の考え方が過去のプロジェクト経験に基づいて組成されることから,スコープギャップやスコープクリープが発生する可能性が極めて高い.こうした問題を解決する・軽減するためには,プロジェクト開始前の提案段階でプレプロジェクトを発足し,顧客文化の吸収と顧客業務の理解を深めることが必要不可欠となる.プレプロジェクト段階では正式なPM認定がなされておらず,体制も潤沢に揃っていない中,社内的にも認可が下りづらい状況ではあるが,超上流工程という限られた期間を効果的に過ごすためにも従来のやり方にとらわれず推進していく必要がある.



メンバの目的の理解度がプロジェクトに与える好影響について

安藤 勝


ITプロジェクトが遅延する・混乱する要因の一つとして,重大課題が解決できないことが要因となっていることがある.そういった重大課題は,あらかじめ想定した手段・アプローチではプロジェクトの目的を達成できないことから発生していることが多い.そして課題解決に時間を要し,プロジェクトは遅延・混乱していく.このような重大課題に対する解決策の検討に際し,プロジェクトや作業の目的に立ち返ると,複数の解決策(手段やアプローチ)があることに気づき,解決に至ることがある.目的に対するプロジェクトメンバの理解度が重要課題の速やかな解決や重要課題そのものの発生抑止に繋がり,プロジェクト推進に非常に良い影響を与える.



ソフトウェア安全度に基づくOSSに対するソフトウェア信頼性モデルとその評価

柳澤 拓,田村 慶信,山田 茂


ソフトウェア信頼性はソフトウェアの品質を評価する上で重要な要素である.またオープンソースソフトウェア(以下,OSSと略す)は低コスト,標準化,短納期といった理由から多くの組織に利用されており,今後さらにOSSの需要が高まることが予想される.しかし,OSS特有の開発形態が原因による品質やセキュリティの低さが問題点としてある.今後の需要を考えるとOSSの品質は重要な課題になってくる.また,ソフトウェアの信頼性を定量的に図るものとしてソフトウェア信頼性モデルがある.過去に様々なモデルが提案されてきており,代表的なモデルとしてソフトウェアの故障率を指標としたハザードレートモデルがある.本論文ではOSSのバグトラッキングシステムに登録されているフォールトビッグデータを用いて,フォールトの平均発生時間間隔を基にソフトウェア安全度に基づくOSSに対する新たなソフトウェア信頼性の評価尺度を提案し,ハザードレートモデルによる評価を行う.



要件定義工程遅延からの納期遵守のための改善活動
- 新卒2年目社員の初PMの一事例 -

石川 稔樹,高柳 進ノ介,鈴木 洋平,小林 弘明,瀬ノ上 大介,中島 雄作


筆者の所属会社では,新卒2年目社員のOJTの一環で,所属プロジェクトの何らかの課題に対して解決するための活動を,チームリーダーとして実践し,2年目の最後に社内で成果発表するよう指導している.本稿では,当時,新卒2年目社員の筆者が初めて経験したプロジェクトマネージャーとしての活動の事例を紹介する.筆者の所属するプロジェクトは,要件定義工程で既に遅延し,このままでは納期に間に合わない可能性が非常に高くなっていた.「本来は来ないはずの調査依頼の工数」に時間が取られていたことと,「手戻り工数」が通常より多かったことが表面的な要因であったが,真因分析をすると両方とも,過去に開発した部分の設計書の品質が悪いことが根本原因であることがわかった.筆者らは然るべき対策を取ることで,無事,納期を守ることができた.



気づきに着目したPM育成の現状と今後の課題

辻川 直輝,大鶴 英佑


変化の著しい市場にプロジェクトを適応させて,新規プロジェクトでも大きな失敗をしないようにリスクに柔軟に対応することがプロジェクトマネージャ(PM)には求められている.プロジェクトの振り返りの中で,課題・問題は意識していたが影響を見誤った,兆候はあったがリスクを認識することが出来なかった,そのため原価が悪化したという声が上がっている.早く気づくことが出来れば迅速な対応も期待できるため,気づくことに優れたPMを育成することが必要である.そこで,第一人称で考え,幹部・同世代との交流を図り,気づく機会を創出して知識や対応の引き出しを増やすことを目指して,PM交流会を立ち上げた.PM交流会は幹部講話,親睦会での意見交換,ディスカッションの3つを軸として,改善を繰り返し,気づきを増やすために工夫してきた.評価は,アンケートによる参加者や上司への5段階評価,および自由な意見から抽出した関連ワードの出現傾向から行っている.ディスカッションを高揚させる導入,手書き・付箋紙の活用,PMへの期待の見える化が大切である.本稿は,推進してきた取り組み状況とCOVID-19を考慮した今後の展開について述べる.



大規模スポーツイベント運営より学ぶリスクマネジメント

金子 英一,海野 浩


一昨年12月に中国武漢にて発生が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,瞬く間に全世界へと広がり,私たちの日常と世界の有り様を一変させてしまった.感染拡大を防ぐための移動制限をはじめとした各種制限は,経済や教育から娯楽・スポーツなどあらゆる分野に影響し,昨年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピック2020は,安全が確保できないため,今年へと開催延期の決定がなされた.人の移動が伴い,3密となる事が想定されるイベント類も,大小問わず中止もしくは延期となっていった.そんな中,感染拡大防止の対策であるソーシャルディスタンス,消毒,手洗いうがい,マスクやフェイスガードの着用といった行動が続くことを受け入れ,あるいはルール化し,ウィズコロナ,新しい日常(ニューノーマル)といった言葉が生まれ広まっている.それらの対策はオフィスや店舗,交通機関といった経済活動の現場,学校や塾といった教育の現場から,ライブハウス,スタジアムといった娯楽・スポーツの現場の運営にも取り入れられ,イベント類もその他の対策も実施の上で,無観客から人数を徐々に増やしながら実施されるようになってきている.当研究では,一般市民が参加するスポーツイベント運営における感染拡大リスク対策の検討から,イベント実施までを,筆者が関わったトライアスロン競技大会の事例を通して検証を行う.



ゴルフのコースマネジメントを題材としたPMBOK®ガイド適用効果に関する考察
- PMBOK®ガイド実践適用を通じたPMコンピテンシー向上への取り組み -

青木 栄介,山本 悠太,瀬沼 剛,呂 宝勇,酒森 潔


本稿は,東京都立産業技術大学院大学酒森研究室で実施しているPBL型教育の一環として,ゴルフのコースマネジメントに対するPMBOK®ガイドの実践適用の内容とその結果について論ずるものである.本取り組みは,通例プロジェクトマネジメントを適用しない分野へのPMBOK®ガイド適用によるPMコンピテンシーの獲得を目的としている.アプローチとしては,まずゴルフのプロジェクトとしての特性を洗い出した上で,PMBOK®ガイドとマッピングを行う.次にゴルフ球技に対するテーラリング方法を提示する.最後に,テーラリングした内容に基づきラウンド計画を立てた上で,ラウンド計画有無による結果差異から効果を測定し,その測定結果について考察する.



ウォーターフォール型開発モデルの課題対応に関する一考察
- アジャイルの考え方を取り入れたプロジェクトマネジメント -

木村 良一,三宅 由美子,加藤 嘉津子,中村 健治,重岩 洋介,酒森 潔


多くの日本のITプロジェクトは、ウォーターフォール型開発モデルを採用しており、プロジェクトマネジメントを行っている。しかしながら、近年の経営スピードに対し、ウォーターフォール型開発モデルではうまくいかないケースもみられるようになってきている。本研究では、現在のウォーターフォール型開発モデルにおけるプロジェクトマネジメントの課題と、その課題に対応するアジャイルの要素について考察した。



オンライン環境におけるプロジェクトマネジメント教育の充実

金井 武志


過去のプロジェクトマネジメント事例を題材としたケースメソッド研修において、コロナ禍により、講師や事務局を含めたフルオンラインで研修を実施した。オンライン開催は人の移動が不要となるなどメリットもあるものの、教室での集合教育と比べ意思疎通が難しい、研修時間がやや伸びるなどのデメリットも発生している。本稿では、オンライン研修を前提に受講生への教育効果を最大化させるために講師の立場で実施した方策とその効果、更に今後の研修において検討している改善施策について述べる。



不確実性の高い上流プロセスのマネジメント手法

後藤 智博,西郷 智史,渡瀬 智


プロジェクトにおける上流プロセス(研究開発/要素開発/要件定義等)の成否は企業の将来的な利益に大きく影響を及ぼす。一方で、上流プロセスは不確実性が非常に高く、従来の方法ではマネジメントを機能させることが非常に難しい。そのため、上流プロセスについては、そもそもマネジメント対象から除外しているという組織も少なくない。本講演では、上流プロセスにおいて機能的/効率的なマネジメントをどのようにして構築するかについて、CCPM(Critical Chain Project Management)をベースとした「段階的フルキット」、「ベロシティベースバッファマネジメント」という2つの考え方を具体的な事例を交えながら紹介する。



PMナレッジコミュニティのオンライン化から見えたもの
- ジョブ型人財に対応するための新たなPM育成施策 -

築地 秀知


当社では,プロジェクトマネジメントにおける知識や経験則といった暗黙知を伝搬する場としてPMナレッジコミュニティを定期的に開催しているが,今年度はコロナ禍のため集合研修からオンライン化を余儀なくされた.開催にあたっては,オンライン特有の課題が発生しつつも,集合研修の課題解決に繋がる気づきを得ることができた.今後は,人事制度においてジョブ型雇用の導入が検討されている.このことは,プロジェクトマネージャ(PM)についてもより一層の自律化が求められるとともに,教育部門においてもこれまでの「教育」一辺倒から「キャリア支援」も視野に入れた,新たな仕組み作りが求められる.本稿では,PMナレッジコミュニティのこれまでの取り組みとあわせて,コミュニティの運営により得られた知見をもとに,ジョブ型人財に対応するための新たなPM育成施策の検討について述べる.



日立ITプロフェッショナル認定制度(CIP制度)を利用した若年層PMの育成
- 強い意思と蓄積した知識はプロジェクト経験によって実行力に変化する -

譽田 賢一


プロジェクトをより確実に成功させるためには,適切なスキル(能力)と経験を有する社員をプロジェクトマネージャ(PM)として任命することが重要である.当社は事業規模拡大に伴い,プロジェクトの大型化の傾向が著しいため,中・大規模のプロジェクトに対応できるPMの育成が急務である.また,若年層社員についてもプロジェクトに担当として参画している現状から,中規模プロジェクトのPMとなれるように育成する必要がある.しかし,担当者が急に担えるほどPMは容易なものではなく,経験が浅いPMにプロジェクトを任せ,失敗することも避けなければならない.そこで「日立ITプロフェッショナル認定制度(CIP制度)」を利用して若年層PMの育成を行うこととした.当社の現状の課題から,本制度をどのように利用し育成を行ったか,また,今後の課題と対応について述べる.



パッケージSI要求分析のDXによる効率化

松田 勝志,大崎 隆夫,魚住 貴之


パッケージソフトウェアのSIプロジェクトでは,プロジェクト開始時に顧客の要求がパッケージソフトウェアの標準機能で実現できるか,カスタマイズしなければならないかを判断する要求分析を行い,予算を明確にする必要がある.このタスクはパッケージソフトウェアに熟知したSEが顧客要望を正確に把握して実施する必要があるが,近年のSE不足や納入期限の短縮などの問題から大きな課題となっている.筆者らは,顧客要求からAIを活用して適切なSIアセットの選択による自動システム設計,最適なパラメータチューニングによる自動システム構築までを行うシステムを開発し,SI業務のDigital化による様々な効果を目指している.本稿では,その一部である要求分析のDXによる効率化を行うSEヘルパーについて報告する.実際のSI案件の過去データを学習することで実用可能な精度を達成できたこと,およびその過程で得られた知見について述べる.



デジタルトランスフォーメーション案件における顧客マネジメントの事例研究

平地 真也


近年,あらゆる産業において,各企業は,競争力維持・強化のために,デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められている.それに伴い,デジタル案件は急速に増えているが,そこには明確なビジョンがなく,PoC(Proof of Concept: 概念実証.戦略仮説・コンセプトの検証工程)を繰り返し,ビジネスにつながらない.いわゆるPoC貧乏から脱却できずにいる.経済産業省のレポート[1]でも今後,DXを実現していく上では,デジタル技術を活用してビジネスをどのように変革するかについての顧客経営戦略や顧客経営者による強いコミットメント,それを実行する上でのマインドセットの変革を含めた顧客組織内の仕組みや体制の構築等が不可欠であると唱えており,DX案件のビジネス化には,上記のように顧客に明確なDXビジョンを描くように誘導する顧客マネジメントが重要と考えた.私は,小売業でのPoC案件を2つのプロジェクトを経験した.本稿では,2つのプロジェクトを比較し,PoC案件を成功に導く顧客マネジメントの留意点を説明する.



プロジェクト特性にあわせたプロジェクト計画の立案・遂行と プロジェクトマネージャの育成

山極 惠美子,鷲尾 剛


本稿で報告する組織の近年の課題は,不採算プロジェクトである.発生した不採算プロジェクトについて分析した結果,プロジェクト特有の要因(初めてのお客様,プロジェクトマネージャにとって未経験のプロジェクト規模,初採用の技術など)への対応,および,プロジェクトの初期段階の準備に問題があると判断した.我々は,プロジェクト初期段階の諸問題の中でまずはプロジェクト計画の問題に焦点をあてることとし,不採算プロジェクトを減らすために,「プロジェクトの特性をふまえたプロジェクト計画を立てること」と「プロジェクト計画を遵守してプロジェクト遂行すること」を組織的に推進してきた.本稿ではこの活動のプロセスを紹介し,同時に取り組んだプロジェクトマネージャの能力向上についても報告する.



OSS指向EVMを用いた最適保守時間の導出とその検証

曽根 寛喜,田村 慶信,山田 茂


オープンソースソフトウェア(Open Source Software,以下OSSと略す)は様々なメリットのもと多くの個人および企業に使用され,バグ管理システムを用いることで様々な開発者によって開発および保守がされる.一般的に脆弱性の観点から,プロプライエタリソフトウェアと同様にOSSにおいても定期的なアップグレードが必要とされるが,ユーザにとって頻繁なソフトウェアのアップグレードはコストが重なり不適である.本研究では,あるバージョンのOSS導入後,次にアップグレードをする際にコストが最小となる時刻を,ソフトウェア信頼度成長モデルを用いて予測する.さらに,導出された時刻がソフトウェアの品質の観点から適切であるかについても考察する.



ワーク・エンゲージメント向上による標準プロセスの実施度改善活動

木村 和宏,内藤 孝一,清水 寿幸


筆者が所属する組織は,全社的な情報システム開発プロセス改善の支援を行なっている.支援先の1つに,作業手順書の事前検証やレビュー,手順書の遵守等を組織の標準プロセスとして定義し,システムのリリース作業や設定変更作業における作業ミスによるトラブル防止を推進している組織がある.当該組織においては,短納期オーダーへの対応や作業実施時の想定外の事象への対応によってこれらの標準プロセスが必ずしも実施されていないことが時々発生しており,上記のような特殊な状況においても,上記の標準プロセスの実施徹底を行うことが課題となっていた.筆者らは,当該組織を支援する中で,標準プロセスの実施度とプロジェクトメンバーのワーク・エンゲージメントに相関があることを発見し,メンバーのワーク・エンゲージメントを高める活動を支援することによって標準プロセスの定着度を向上させることができた.



フルリモート環境下における新入社員教育に関する考察

迫 佳志


昨今の情勢においては,多くの企業でリモートワーク導入が急速に進んでいる.これに伴い,新たに入社する社員においては,入社後いきなりリモートワークで業務を始めるケースも珍しくない.新入社員を育成する側の立場からすると,従来のような対面でのコミュニケーションを実施すること等ができないため,リモートワーク環境に適合させた従来とは異なるアプローチによるコミュニケーションが重要になってくると考える.また,コミュニケーション方法を誤った場合,新入社員のスキル向上の阻害やモチベーションの低下にも繋がってくる.本稿では,フルリモート環境下で新入社員の教育を実践した筆者の実体験を交えながら,新入社員が効率的に会社またはプロジェクトに参入するために必要となる手法について考察を行う.



PBLプロジェクト中盤に着目した行動分析

岩間 智史,武田 善行


近年,アクティブラーニングが大学の講義で多く取り入れられている.特にPBL活動は,学生自身が能動的に活動し,体系化された知識を活用する力を養うことが目的である.本研究では学生のPBL活動中盤における行為と頻度について調査した.これまで学内や学外などのPBL活動でPMを務めたことのある学生を対象に実験を行った.PBL活動で上位の評価を受けた学生を優秀な学生,その他の学生を標準な学生として比較分析を行う.因子分析の結果,プロジェクト中盤において5要因が特定された.u検定による分析で民主的な雰囲気づくりにのみ有意差が認められた.この結果から優秀な学生はチーム内のコミュニケーションを重要視し,チーム内の権限が偏らないよう行動していることが示唆された.



大規模プロジェクトにおけるプロジェクト管理計画の効果と教訓

梅澤 知弘


基幹系システムなどのミッションクリティカルなシステム開発では,実現すべき要件は複雑となり,ステークホルダーも多岐にわたることから,ステークホルダー間の認識齟齬の発生や作業遅延がプロジェクト推進に及ぼす影響は大きく,それらをマネジメントすることは非常に高度となる.それ故,プロジェクト計画段階における課題・リスクの推測と,課題・リスクが顕在化した際の行動計画をあらかじめ立案しておくことは,円滑なプロジェクト運営を行う鍵であり,プロジェクト管理計画が果たす役割は非常に重要である.しかし,プロジェクト規模が大きくなればなるほど,プロジェクト計画段階では推測できない課題やリスクが潜在化する可能性も高いことから,本稿では,ミッションクリティカルなシステム開発におけるプロジェクト管理計画書と,実際に発生した課題やリスクを照らし合わせながら,プロジェクト管理計画書が,プロジェクトマネジメントに果たした役割を考察するとともに,今後のプロジェクト運営に向けた教訓について報告する.



ミッションクリティカルなシステムにおけるアジャイル開発適用事例と課題

寺田 由樹


本稿では筆者が経験してきた製造業におけるアジャイルプロセス適用に関する事例と課題を取り上げる。製造業において、企業経営にも大きな影響を与えるミッションクリティカルなITシステム開発においても、近年,開発プロセスの柔軟性向上や効率化の要求は高まっており、更に多様で難易度の高い要件の早期実現の期待も大きくなっている。一方でシステムの可用性や品質に関する期待値も引き続き、非常に高い状況にある。多品種少量生産で短期間での製品化を求められる製造業でのミッションクリティカルなシステム開発において、初期導入に向けたシステム構築フェーズ、および導入後の運用フェーズでの追加開発や運用保守作業にアジャイルプロセスを適用した事例と今後の課題について記述する.



DXを支えるサイト信頼性エンジニアリング実装のプロジェクト

劉 功義


デジタルトランスフォーメーションによりビジネスに対してITの重要度が高まる中,ITサービスのユーザー視点でサービスの信頼性を維持・向上することが必要となっている.そのためには,短いサイクルで定常的に発生する変化に対するリスクをコントロールということも求められる.このような状況の中でサイト信頼性エンジニアリング(SRE)の考え方が広まっており,Webサービスを提供する企業を中心としてその適用も始まっている.本稿では組織にこのSREの考え方を導入し,運用する活動をプロジェクトマネジメントの視点から整理する.



多様な人材のためのプロジェクトマネジメント教育に関する一考察
- コンピテンシー評価シートを活用する -

三宅 由美子


ビジネスとITが統合される中で,ビジネス部門に所属しているような多様な人材がITプロジェクトに参加する機会が増加している.そのため,プロジェクトマネジメントを学習する必要性は,社会人にとって,ますます高まってきたと言える.しかしながら,ビジネス部門に所属する社会人に対するプロジェクトマネジメント教育に関する研究は多くはみられない.本研究では,2019年に過去の調査分析結果に基づいて「プロジェクトマネジメントを学ぶ社会人学生の仕事と学習の目標モデル」を報告した.本論文では、企業のビジネス部門に所属する社会人学生について,大学院におけるプロジェクトマネジメントの学習する中での学習と仕事の目標と成果をモデルの中で示す.



アニメーション制作現場におけるプロジェクトマネジメント導入の検討

白石 彩夏


世界から注目される我が国のアニメーション産業であるが、閉鎖的で独自の道を歩んで今日に至った結果、近年では様々な問題が露呈するようになった。インターネットが発展し、携帯電話の5G化が進む中で、今後はますます映像コンテンツの需要が拡大する。わが国のアニメ産業をこのまま放置しておくのは、文化的な面だけではなく、経済的な側面からも大きな損失になる。アニメーション制作現場の現状をこの過酷な労働環境に陥る要因として、製作委員会方式の採用が考えられるが、収益の見込みが立てづらいアニメーション制作において、一社で制作費を賄うことは不可能であり、この方式を廃止することは現実的ではない。この問題を解決するには、複雑な組織の中で、仕事の流れを合理的に管理する必要があり、プロジェクトマネジメントの導入により問題解決を図る。



PMとしてのモチベーションコントロール

上田 純子


筆者はPMとして幾つかのプロジェクトに参画してきた.プロジェクトはたびたび予期しないことが発生し,スコープどおりにコントロールできたと思っても作業延期や組み換えすべき事象は発生する.さらにはプロジェクト責任者としてさまざまなステークホルダーに対する報告や説明が必要になる.このようなプレッシャーに耐え,期待に応える必要がある.筆者はプロジェクトでの失敗を幾度か経験し,それを教訓として次のプロジェクトに応用させて課題や問題を解決してきた.最終的なゴールはプロジェクトを成功させることであるが,その過程で遭遇する様々な困難に打ち勝つためのPMとしてのモチベーションコントロールについて紹介する.多くの若手エンジニアが今後のキャリアを考える際に,このコントロール方法を参考にしていだければ幸いである.



システム開発プロジェクトでのテーラリングの実践

佐々木 英彦


プロジェクトマネージャは企業のビジネス目標の達成やプロジェクト成果の最大化に向けて,プロジェクトの模範となる知識体系ガイドや開発方法論などの「プロセスモデル」と,社内のプロジェクト管理規格や標準書式などの「組織内標準」を活用する.さらに,プロジェクトマネージャは個々のプロジェクトの独自性を理解・分析し,プロジェクトの各工程や置かれた状況に応じて,これらのプロセスモデル及び組織内標準を適切に選択し,組み合わせてその適用の度合いを決める.これらは,プロジェクトにおいて「テーラリング」と呼ばれる.特に近年,ITプロジェクトに関連するデファクトの知識体系ガイドや開発方法論においても,テーラリングの必要性が強調されるようになっているが,その実施方法や手順が実務に落とせるレベルで詳細化されていない.そこで,あるお客様の「大規模基幹システム」の開発プロジェクトでのテスト計画について,テーラリングを実践した際のプロセスとその結果を論じる.



数理最適化によるソーシャルディスタンス調整を伴うオフィスワーク管理

森口 聡子,本田 亮


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の緊急的な対策として,企業はいわゆる「3密(密閉・密集・密接)」を避けるためにテレワークの導入を迫られた.オフィスへの通勤が可能とされても,専門家会議が提言した「新しい生活様式」に対応した働き方が各企業に求められ,総務や管理部門にとって喫緊の課題となったのが,感染リスクが高い従来型のオフィス空間のレイアウト変更であった.本発表では,テレワークを活用しながら,出勤者のソーシャルディタンスを確保したオフィスワークの管理について,数理最適化手法による実現を報告する.業務内容や就業規則による制約,社員のテレワーク希望日等の要望に基づく出勤計画を踏まえつつ,出勤者同士のソーシャルディスタンスの確保と業務内容による要請を満たす座席配置を実際に数理計画ソルバを用いて最適化し,オフィスワーク管理に実践できることを示した.



コロナ禍での海外プロジェクト課題と対策事例紹介

廣畑 喜則


現在,多くの企業に新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策として,主たる勤務地を自宅にすることが求められており,リモートワークの推進が急務となっている.この様なコロナ禍での海外プロジェクトを経験しており,海外プロジェクトを実行する上で発生した課題,リモートワークで発生した課題に関して実施した対策と効果をまとめた.前半では,コロナ禍の中で在宅勤務を行ったことで増えた時間,減った時間を中心に変化点に関して,日本全体の傾向とチーム内の傾向を比較しまとめた.後半では,海外プロジェクト実行する上で発生した課題,リモートワークで発生した課題に関して実施した対策と効果をまとめた.



マルチステークホルダー・プロセス適用に必要な人材スキルの抽出
- 自治体が必要とするデジタル人材 -

浦田 有佳里


地域のデジタル化には,3つのデジタル化があると考えられる.ひとつは,行政事務のデジタル化,二つ目は行政サービスのデジタル化,三つ目は地域のデジタル化である.行政のデジタル化や行政サービスのデジタル化には内部組織の合意形成,地域のデジタル化には地域の企業や団体,市民の合意形成が重要になる.多様なステークホルダーが関与する社会課題の解決には,合意形成が必須である.マルチステークホルダー・プロセスは,多様なステークホルダーの合意形成のための方法である.現在,自治体や地域のデジタル化が進むなか,必要なデジタル人材がどのような人材か,自治体のデジタル人材のニーズからマルチステークホルダー・プロセスに必要なスキルを抽出する.



発展途上組織を対象としたSIプロセス改革事例

吉枝 努


その構成員を含めて洗練されていない組織を対象とする.そういった組織ではSIおよびそのプロセス、マネジメントが属人的に行われている.他のより発展した組織からノウハウなりより良いやり方に関する情報が提供されても、それらを吸収されない.該当組織固有の問題もあり、それらを紐解いた解決方策としてSIプロセス改革を提案し推進することとした.今回はある組織に向けた取り組みであるが、改革の本質はどの組織にも当てはまる部分もある.その内容を紹介する.



成功プロジェクトに学ぶ実践的ケースメソッドによる組織知の伝承効果の報告

坂上 慶子,畦元 隼,今林 朋子,伊名波 良仁


プロジェクトは,いかなる場合も固有の母体組織の上に成り立つ.母体組織は,固有の状態,方針,成果レベル,関係性などを持ち,それらは外的世界と密接かつ複雑に絡み合っており,常に変化している.デファクトスタンダードのプロジェクトマネジメント知識を獲得するのみでは,プロジェクト遂行に必要となるコンピテンシとしては不足する所以である.その解決策として,自社事例を用いるケースメソッドが採用されることがある.その際,失敗を題材にして学ぶのではなく,逆転の発想で,過去の成功事例を使い,その中から真の組織課題に気づかせ,組織を横断して本音の議論をさせることで,それらの課題を乗り越えられるような真の解決策(べき論ではなく)への気づきを与えるような学びの場を提供した.本書では,自社事例を使って何をどのように学ばせるかという教育設計を行い,実際に実施した評価について,報告する.



リモート環境でのTokyo P-TECHパイロット活動事例紹介

野尻 一紀


発展し続けるITの分野では,学歴に依らない新たな人材が求められます.15歳から20歳までの子どもたちが,新しい時代に必要なITスキルと社会人スキルを学ぶ5年間の公教育モデル「Tokyo P-TECH」のパイロット活動として,高校生向けPBL(Project Based Learning)と専門学校学生向けキャリアデザイン講義の支援活動に参加しました.プロジェクトマネジメント手法やプロジェクトマネージャーの役割について,生徒・学生に伝える機会ともなりましたので,事例として紹介します.



振返りサイクルを活用した品質マネジメント

小林 和弘


ITプロジェクトにおいて様々な開発手法が確立されているが,全てのプロジェクトが必ずしも成功するものではない.プロジェクトの成功要因として考えられているものに,開発コストの厳守,納期厳守,品質確保の3つが挙げられる.特に品質については,品質確保が十分でない場合,開発コスト・納期ともに厳守することが難しい状況が発生する.そのため,品質確保を行うことが,プロジェクトを成功させるための基本となりえると考える.こうした状況から,品質確保を行うための手法として,プロジェクトの振返りを行い,そこから改善施策を実施する振返りサイクルが効果的であると考える.



価値探索型プロジェクトのマネジメントの試み
- 学生のゼミ運営をモデルに -

森本 千佳子


近年、新規ビジネスの創出など新しい価値探索の試みが活発となっている。従来、プロジェクトマネジメントとは、与えられた制約の中で、プロジェクト目標を達成するための一連の取り組みである。一方で、偶発的要素の多い価値創出プロジェクトにおいては、制約そのものを疑うことが要求され、デザイン思考アプローチのような改善プロセスを取り込んだマネジメントが求められている。具体的にはアジャイルプロジェクトマネジメントが適用されている。本報告では、アジャイルプロジェクトマネジメントの中からリーダシップを抽出し、問題解決プロセスとしてデザイン思考的価値探索アプローチを取り上げ、学生を対象としたゼミナール運営に当てはめた事例を紹介する。



アジャイル開発プロジェクトを成功へ導くための体制のポイント

桑田 直樹,山村 喜恒,渡辺 秀樹,中村 晋


デジタルソリューションに関するプロジェクトでは,試行錯誤を重ねて価値を生み出す必要があるため,事前にスコープを確定することが難しい.そのため,短いリリースサイクルで変化に柔軟に対応できる「アジャイル開発」の開発スタイルを採用する傾向である.しかし,プロジェクトマネージャーが,アジャイル開発に対して,誤った理解でプロジェクトを進めてしまうと,プロジェクトが失敗するリスクがある.本稿では,アジャイル開発を推進する上で必要なプロジェクトマネジメントのうち,体制,役割,および責任について考察する.



デジタルトランスフォーメーションにおける価値共創のためのナレッジマネジメント
- ― DXにおける価値共創のための組織的知識創造視点からの考察 ― -

酒瀬川 泰孝,大成 恭子,坪井 豊,大鶴 英佑,寺尾 賢司


デジタルトランスフォーメーション(DX)のサービス構築やソフトウェア開発は,新たな価値の創造であるとの視点に立てば,ICTベンダと顧客企業が組織を超えて双方の得意領域を融合し、知的機動力を高め、迅速な知の創造を行うに他ならない.本論文では,DXサービスで提供する価値の最大化のための要素についての調査を行った.その結果,DXサービスの価値最大化のために,DXのソフトウェア開発チームのマネージャーやリーダーにおいても,経営層と同様に超上流域のビジネス変革の目的,そのための戦略やDXで生み出す価値の内容を理解し継承していくことが重要であると示唆された.



アジャイルプロジェクトにおける顧客利益獲得モデルの提案
- 「アジャイルプロジェクトの木」による顧客ベネフィットの構造化の研究 -

吉田 知加,関 哲朗


近年,国内の大規模開発プロジェクトにおいてもアジャイル型開発が採用されることが増えている.スクラムなどのアジャイル型開発モデルの採用は,ユーザのプロジェクトへの参画を促し,ユーザとベンダのコミュニケーションを密にすることで,良好なパートナシップの下でのプロジェクトの成功確保にも貢献している.一方で,プロジェクトの成果が逐次的かつ具体的に共有されることから,顧客ベネフィットの現実化には従来よりも厳格な評価が下されるようになった.本研究では,顧客ベネフィットの構造を明確にし,その獲得方式をプロジェクトマネジメントに導入するための基礎として,アジャイルプロジェクトにおける顧客利益獲得モデルを提案した.提案のモデルは,ウォータフォールモデルを採用したときの顧客利益獲得モデルと比較されることで,逐次的に得られるアジャイルプロジェクトの成果物によるベネフィットの創成構造の特徴を強調し,その現実性を確認した.



多機関参画型 産学官連携研究プロジェクトにおける要求分析とアジャイル開発の有効性と要員育成について

中浦 秀晃


ナショナルプロジェクト(NP)における研究開発は、現代社会が抱える様々な課題やニーズに対し同じ課題共有のもと結成したコンソーシアムを構成する各研究機関の専門的な技術やノウハウをどのようにとりまとめ最大限に生かすことができるのかが重要である。特にその全体を統制する情報システムは、プロジェクト全体を支えるものであり、関係する各プレイヤーからの要求を都度分析し、個々が有する技術、研究成果を満たすシステム構築が求められる。一方でこのようなプロジェクトにはアジャイル開発が効果的であるが、これまで弊社で取り組んできた従来型のウォーターフォール請負開発とはその目的や概念が異なるため、経験のない要員の育成、意識改革が必要である。本事例は、多機関が参画した産学官連携プロジェクトにおける仮説検証型のシステムの要求分析、アジャイル開発を通した開発要員の育成、意識改革の取り組みについて紹介する。



プロジェクト振り返りの重要性に関する考察
- なぜ失敗PJは繰り返されるのか -

荒木 辰也,今井 達朗,松山 新,宮前 朋恵


古今東西,一点の曇りなくすべての要素がポジティブに終わったプロジェクトはほとんど無いだろう.逆に言えば,多かれ少なかれ,あらゆるプロジェクトには「失敗」が発生している.一方,我々はこれまで数多くの開発プロジェクトに参画してきたが,プロマネ史上初,その部門初,といったトラブル事象に行き当たったケースはほぼ皆無である.必ずどこかで誰かが直面し,原因究明し,再発防止策を立ててきた事象のどれかに類似する,あるいは酷似する.つまり,繰り返しなのである.では,なぜプロジェクトの失敗は繰り返されるのか.そういうリスクが存在することを正しく事前に認識し,備えるために何ができるのか.本稿では,その対策について,プロジェクトの振り返り方という視点から考察を行う.



プロジェクトマネジメントの教育における演習の利用についての実施成果について

大野 彰則


プロジェクトマネジメント教育の実施にあたって、その効果を高めるために、講義だけでなく、演習も行う場合がある。演習で取り組む課題は、教育の内容に合わせて個々に作成する場合がある。今回は、実際に発生したプロジェクトの課題対応の事例と、教育を組み合わせ、教育の効果を高める狙いで実施した。その事例を紹介する。



プロジェクト初期診断フレームワークの検討
- プロジェクト知見を継承した機械学習モデルによる推奨情報提供方法 -

浦田 敏


プロジェクトマネジメントにおいて,早期段階でプロジェクトの成功に向けたアクションに繋げる方法が求められている.本論では,機械学習を用いた新たなプロジェクトの初期診断フレームワークを提示する.機械学習モデルにより,プロジェクトの上流工程時の状態評価を基に,プロジェクト完了時点の品質,コスト,納期,顧客満足度に関わる要因が予測可能となる.また,機械学習による予測結果をSHAP技術により解釈し,具体的なアドバイスを生成する方法についても提示する.本フレームワークを活用することにより,プロジェクトにおける早期かつ具体的な改善対策に役立つと共に,これまで困難であったプロジェクトを跨った知見の共有方法として期待される.



アジャイル開発における情報セキュリティ対策に関する一提案
- 安全・安心なSoEシステムの実装に向けて -

廣瀬 守克


近年,新たなビジネスモデルの実現を目的とした,デジタル技術を活用した情報システムの構築が増加している.これらの情報システムをリリースした際に,情報セキュリティトラブルが発生したという報道が後を絶たない.スマホによるバーコード決済システムにおいて第三者がなりすまして,不正に利用者登録を行い,銀行の口座情報やクレジットカード情報を登録された事件や,暗号通貨の取引サイトで開発者が気づかずに実装したセキュリティホールを突いた攻撃により,暗号通貨の盗難に遭った事例などである.情報システムのセキュリティホールに気づかないままリリースしたことが原因である.テストを十分に実施していれば防止できた事例ばかりである.このようなトラブルは数年前から頻発しているにも関わらず,過去の失敗事例に学ばずに根本的な対策が打たれていないようにも感じられる.この原因は何処にあるのか.これらのシステム開発ではアジャイル開発プロセスを採用する場合が多い.アジャイル開発におけるプロジェクト計画書に相当するのはインセプションデッキである.このインセプションデッキを作成する際に情報セキュリティ対策が取り入れられていないところに原因があるのではないかという仮説を立てた.この仮説を検証し,その対策として,どのような対策を取り入れるべきかを考察したので報告する.



EdTechへのソフトウェア工学技術の適用に向けて

日下部 茂


近年はEdTechという造語もできるほど教育と情報処理技術の融合が進んでいる。これからの教育者は、自らプログラミングすることはなくても様々なIT機器やサブシステムなどを組合わせて利用する授業シナリオを構築実践し、必要に応じて改善する能力が重要となる。一方、この傾向が続けば、教育者側の能力や成熟度の差によって教育の成果に差が広がることが懸念される。このような状況を、ソフトウェア工学の技術を適宜テーラリングして適用することで改善できると考え、特に、プロセスやモデリングの技術に着目して検討を開始した。



プロジェクト・リスク・マネジメントに関する研究の動向

木野 泰伸,大野 富,山内 美佐子,富山 達朗,原 弘和


リスク・マネジメント研究会では,プロジェクトにおけるリスクマネジメントに関する研究を行っている.過去には,PM学会で発表されているリスクマネジメントに関係する論文の傾向分析やリスクの識別に関する研究を行ってきた.また,近年は,リスクマネジメント研修に使える教材の作成を行っている.本発表では,リスク・マネジメント研究会の現在の活動と今後の計画として,現在進行中のリスクマネジメント研修の教材作成,社会で認識されているリスクの動向,次年度に向けての研究の計画について報告する.



ITサービス企業内プロジェクト管理プロセスの国際知識移転に関する事例研究
- 多国籍組織間知識移転における関与者の特性分析 -

遠藤 洋之,内平 直志


日系多国籍ITサービス業におけるプロジェクト管理(PM)知識のアジア太平洋(APAC)地域内移転に関し, 筆者らは知識の送り手・受け手双方へのアンケート及びインタビュー調査を行い, 知識移転に影響を及ぼす要素を抽出した.日系ITサービス産業における日本発注・海外受託事例に関する先行研究においては国別差異に着目した分析が主流であった.一方ITサービスプロジェクト管理実施要領を移転対象とした当研究では, 知識の送り手(親会社)から, 受け手(海外子会社)への国際間移転において, 送り手・受け手に限らず顧客を含む関与者の組織特性(要件定義能力やリスク管理能力等)も知識移転の成否に影響すること, また受け手組織内での知識の現地化活動, 更に他国の関連企業への展開活動時における関与組織間の情報交換は, 知識の定着に寄与することが見出だされた.



プロジェクトマネージャのキャリア形成と人材の流動性

三好 きよみ


DX推進や新技術への対応において、IT人材の需要が増大する中、新規育成に加えて、既存のIT人材が適材適所で最大限能力を発揮できるよう、組織や企業を越えて、人材の流動性を高めることが課題とされている。その対応策の一つとして、IT人材が、主体的に自己と向き合い、環境変化に適応しながら、自己啓発に取り組み、自分に適した職場で能力を発揮できるようにすることが考えられる。そこで、プロジェクトマネージャのキャリア形成のプロセスと転職経験者からのヒアリングから、主体的キャリア形成に至る背景や要因を検討する。



I Tシステムのニアショア開発におけるニューノーマルへの適用事例と展望

長川 智雪


日本企業がITシステムの構築や保守プロジェクトにおいて,オフショアやニアショア開発を採用している.2020年COVID-19の世界的拡大により,ニューノーマルへのシフトが加速した.本稿では,プロジェクトマネジメントの視点で,ニアショア開発プロジェクトがニューノーマル環境へシフトした際の事例と課題を紹介する.また,アフターコロナ時代に求められるニアショア開発の展望について記述する.



ソフトウェア開発を中心としたSIプロジェクトにおけるハードウェアの品質リスク低減のための実例と提案

水澤 浩司


ソフトウェア開発を中心とするSI事業体において,ソフトウェア開発の品質保証基盤に加え,SIに付随するハードウェアの品質保証基盤を整えていくことは,体制面,費用面で非常に多くのコストが掛かり,コスト競争力低下に影響しかねない.しかしながら,ハードウェアの品質保証の対応を怠ると,ハードウェアにおける製品ベンダーの選定,および要求のインプット,開発管理,受入検査を含めた成果物の確認がおろそかとなり,法規法令違反といったインシデントの発生や,開発コストの増加,出荷後の障害多発という事態を招くことになる.そこで,営業やハードウェア開発経験の少ないSEを中心とするプロジェクトであっても,開発委託や製品購入するハードウェア製品の品質担保のために最低限実施すべき事項をプロセス化し,インシデントの発生防止,コスト増加などを抑制するための方法を提案する.本論文では,品質問題事例と,その解決にあたって課題となった点,および工夫した点について論じる.



ニューノーマル時代における新入社員向けコミュニケーション方法

金田 優紀


オンラインコミュニケーションがメインとなった昨今のニューノーマルな時代において,オンライン研修コンテンツは揃っていても,若手社員や特に新入社員においてはどのようなコミュニケーションを行うのかがエンゲージメントに重要となる.またプロジェクトにおいても,PMは全メンバーとのコミュニケーション管理を計画する必要があるが,オンラインにおいて遂行する上での難しさに試行錯誤していると思われる.本稿では,特に弊社新入社員へフォーカスして,コラボレーションのためのSaaSソリューションを活用し,人との繋がり,コミュニケーションを向上するために実施した事例を紹介する



コロナ禍におけるシステム開発のプロジェクトマネジメント

桑原 陽介


システム開発を計画通り確実にマネジメントするためには、プロジェクトメンバとの密なコミュニケーションは不可欠なポイントである。これまでのシステム開発では、要件定義から設計開発・試験、そして顧客による最終検収を経てサービス開始を迎えるまでに、いかに密なコミュニケーションを交わせるかが、成功要因の一端を担っていたと言っても過言ではない。しかしこの1年、コロナの流行によりリモートワークが余儀なくされ、システム開発の手法にも変革が必要となった。この状況におけるプロジェクトマネジメントとして、コミュニケーション管理を中心に通常時と比較して工夫した点や苦労した点を紹介する。



イノベーションの要求レベルを指標としたテレワークの戦略的導入に関する考察
- イノベーションを伴う情報システム開発に対する分散開発環境の導入に関する研究 -

笹澤 耕平,関 哲朗


コロナ禍はNew Normalという言葉を生み出し,その感染抑止の視点からテレワークの導入を多くの産業 に強制した.情報サービス産業も例外ではない.テレワークに代表されるような情報システムの分散開発環境導入の急速な進展は,多くの場面で歓迎された.一方で,その適用が困難な作業の存在も明らかになってきた.従来のテレワーク導入に関わる問題は主に作業環境や労務管理の整備にあったが,コロナ禍下におけるテレワーク導入の必要性は,これらの整備を短期に進めた.一方で,主たる問題の所在は,情報システム開発プロジェクトにおけるイノベーティブな活動へのテレワークの導入方式の在り方に変化している.本研究では,従来のイノベーションの理論やモデルとは異なる局所限定的なイノベーションの考え方を導入することで,情報システムの開発フェーズをイノベーションの要求レベルで整理した.このことにより,テレワークの戦略的選択による導入の指標を示し,当面のテレワーク導入の現実化を提案するとともに,テレワーク環境整備の視点を整理した.